文化には、二つの側面があると指摘したのは米国人心理学者トリアンディス(1980)である。一つは道路、建物、衣服など、人間が作ってきた「物質文化」、もう一つは私たちの頭の中にある考え方、ものの見方、ものの感じ方、価値観、行動、規範など、「主観文化」である。「物質文化」と「主観文化」は横の図のように表すことができる。これを「氷山モデル」と呼んでいる。

この考え方を発展させたものにカーター(1997)の「島モデル」がある。「物質文化」を「見える部分」の海面上の島と考え、「主観文化」は「見えない部分」の海面下の部分として描いている。私たちが、文化の違いをすぐに感じるのはこの「見える部分」である。一方、「見えない部分」の違いはすぐにわからないが、これがコミュニケーション上のさまざまな誤解の原因になっている。

（　ア　）、中国人の張さんはアメリカ人のスミスさんと待ち合わせをした。張さんは20分遲れたが、スミスさんに謝らなかった。スミスさんは張さんを失礼な人だと思った。それはスミスさんの文化では時間通りにすることが重要なことだからだ。反対に張さんは、スミスさんがどうして怒っているのかわからなかった。それは張さんの文化では（　イ　）からだ。これは、時間に対する二つの文化の感覚が違うからである。つまり、文化の見えない部分が問題を引き起こしているのだ。

カーターの島モデルには海底が描かれている。島はそれぞれ違っているが、海底でつながっている（连在一起）。それは文化に関係なく人間には共通する部分があることを示している。どんな島に住んでいても、人間は生きていくために、食事をし、眠る。また、人を好きになる。大切な人が死んだら悲しいと感じる。これらは、全ての人間に共通している感情だと言える。

中国人の平均寿命は 19世紀初めの40歳以下から約2倍の76歳に延びた。今の中国は、高齢化のスピードが速い。中国の国家統計局のデータを調べると、中国は高齢者の人口が多く、65 歳以上の人口が 2016 年にすでに1億5,000万人以上になり、高齢化率が10%を超えたことが分かった。

これまで働いてきた世代は次々に定年を迎えて職場を離れていく。このまま労働人口が減ると、経済成長が遅くなる。さらに高齢者が増えれば、高齢者福祉にかかる費用も増え、これから働く世代の負担が大きくなっていく。そこで、働く世代、つまり子ども世代にだけ親の面倒を見させるというやり方は見直す必要があるのではないかと考えられている。つまり、親の面倒は、子どもとともに社会全体が見なければならないのではないかということだ。一方、高齢者が抱える問題も多くなっている。年を取ると、病気にかかりやすく怪我をすることもある。（ イ ）、家を離れ、都会で働く若者が多くなり、お年寄りだけで生活する世帯も増えている。中国語では「空巢老人」と言う。それらの高齢者には経済面だけではなく、生活面や精神面での支援やケアが必要だ。それで、高齢者が豊かな老後生活を楽しめるように、中国では、政府や企業、公益組織、個人が多くの分野で対策を取っている。そして、高齢者も、多くの人が積極的に「第二の人生」を歩み出している。

（一）

人に頭を下げるということは、若い頃のどんな仕事にも役に立つ能力だ。